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L'amour est passion terrible. Cependant, les menteurs du monde disent l'amour comme la source du bonheur.

久々なお嬢様と執事パロ…
久々すぎて思わず解りやすいようにカテゴリ分けてしまった・・;
えっと
あと

最初に言います
えらい長いです
お時間がある時に閲覧してくださいorz
何故こうなった?
吃驚した
今まで書いたものの中で一番長いような気がする・・;
9000字超えるとか(苦笑)
一つのシリーズ99とかも焦るけれど、一つのSSで9000字行くのも焦るw

タイトルはス/タ/ン/ダ/ー/ルの『パ/ル/ム/の/僧/院』から
「恋というものはなんと怖ろしい情熱だろうか。それなのに、世間のうそつきどもは、恋をあたかも幸福の源泉のように言っている」です。
という意味なのですが…原文から拝借してないので間違っているかもですoyz
それらしくなるように訳したんですがね…
うん雰囲気だけって感じです(涙目)

あ、それときっと通常着替えって侍女さんとかが付き添ってやるものなんでしょうが、このてな子さん、着替えの時に誰かが付くのが嫌な子ですw小さい頃は誰かしら付き添っていたけれど、現在は極力自分でって感じですw
誰かに触れられのが嫌。あとふとしたはずみで目の傷見られるって畏れているから(何故今ここで言う)

注意事項
二次小説です
管理人の妄想と捏造が入り乱れています
皆様のイメージと180度違う場合があります
ゲーム本編の内容と一切関係ありません
セフィティナでパロです
R-18です
めずらしくスパイス程度なんですがねw

18歳未満の方の閲覧は禁止です
気分を害されたとしても管理人は一切責任を背負うことはできません。


大丈夫という方のみ追記からどうぞvvv







L'amour est passion terrible. Cependant, les menteurs du monde disent l'amour comme la source du bonheur.









丁度今日のような日だった。
詳しい日時は覚えていない。
もう遠い昔のことだから、きっと彼女の記憶だって曖昧なはずだが、問いかければ、きっと今日のような日だと、彼女も頷いてくれるだろう。
日時なんてどうでも良い。ただ彼女だけで十分だった。
小鳥の囀りが響く、深い緑の森。芽吹きはまだかと明日を待ち望む花達を眺めながら過ぎ去り、あの時向かう筈だった場所へと彼女の手を引いて、 今度は離れないようにしっかりと握りしめて ゆっくりと向かう。彼女が此方を向いた。何処となく彼女の表情が固いような気がした。黒目がちの瞳には薄らと畏怖が混じっている。








春の麗が窓から陽光と一緒にカーテンのように広がっている。
それとは裏腹に部屋の中を取り巻く空気は酷く重く狂気が渦巻いていた。
ヒステリックな女のように、男は喚いていた。男の金切り声は低く獣の悲鳴の様で女の物よりはマシだったがそれでも醜いものだった。それを自分は哀れな者を見るように眺めていた。そして密かに苛立った。
言われなくとも分かっている。
隣にいた父は興味なさそうにその男の方を見ていた。若干苛立ちの雰囲気は察したが、それは自分が抱くものとは違うもの。そしてこの人は自分の時間を奪われることによるものからだ。
賠償金を払う。と、これ以上その場に居たくなかったのだろう、感情も無く、冷たい声で父はそう言い放った。
それに俺は煮えたぎるような怒りを感じた。
それは喚く男、あの子の父親も同じようだった。
けれども解決策はそれ以外にないのだ。
それも分かっている。
けれど俺は、彼女が物と同じように扱われ、金で取引されるようなことは絶対に嫌だった。大人たちだけで解決されるのが心底嫌だった。
「彼女に…逢わせてくれませんか?」
ずっと沈黙を守っていた俺が口を開くと二人とも此方を見遣った。
「二人にするが嫌でしたら、彼女を今此処に連れて来てください。」
俺は彼女の思う儘にしよう。
俺は彼女の思う儘になろう。
俺にどうしたいか
俺にどんな罰を与えるか
全てを彼女の思うように。
数分後、彼女は怯えた様子で部屋に入ってきた。右の方を覆う包帯は彼女には不釣り合いで、痛々しい。ずっと俯いて涙の空気までも漏れている。
大人たちはじっと無慈悲に小さな少女を見つめるだけ。虚実の優しさを向ける彼女の義父と、怜悧な光を宿して見下す実父。両者に挟まれ彼女は華奢な体を更に小さくして、黙っている。
「…ティナ」
彼女の緊張をほぐそうとなるべく優しい声を選んで、呼ぶと彼女はゆっくりとこちらを見つめた。俺の姿を捉えると、いつものまろやかな表情が漏れた。ただ…
違うのは
右目はもう俺の姿を映すことは無い。
無垢な宝石のような瞳は一つ。
「セ…フィ」
彼女が少し震えた声で、応えるように名前を紡いだ。心に擽られる時の刺激が走る。これはとんだ笑い話にしかならないが、俺はこの年端もいかない、まだ初潮も迎えていない少女に恋に堕ちている。きっかけは何だったか?理由はどうしてだか?思い出せないが、きっとそれは些細なものでしかないから今はもう気にしていない。恋の理由など些細なもの、その芽生えの存在に気づいてしまったらその相手以外どうでもいいものなのだ、と知った。
そう
彼女以外
どうでもいい。
「ティナ…君はどうしたい?」
「?」
「君の傷は…俺の責任だ。…俺に…どうしてほしい?」
二人の大人は、はっと息を呑んだ、似たような焦りの色を滲ませて、俺と彼女、二人の子どもの遣り取りを見つめている。大人たちは何か言いたげだったけれど、彼女に気付かれないように二人を睨みつけ言葉を制止させ、俺だけが言葉を続けた。どうしてほしい?と謝罪の言葉はたくさん君に贈った。それ以上俺はどうすれば良い?
ティナの瞳が揺れる。迷い…のようであった。そして紫玉がじっと見つめる。強く真っ直ぐに、包帯に隠れた右の瞳も、じっと見つめるように。
そして




私の…眼になって




言葉を紡いだ後、二人の大人が何か言う前に、俺は彼女に微笑んで、

そうして私は傅いた。















月が虚ろに輝き部屋を青白く照らし、広い寝台で愛し合う二人を、より冷たく、より美しく互いを映し出した。
愛しい人が自分の中に居る。その事実が彼女の体を震え上がらせた。そのことを思い、その様子を思い描くだけで歓喜に震え、悦楽の材料となった。
けれども今は、言いたいこともある、教えたいこともある、謝りたいことも。
「何を考えている?」
「ひっ!…ぁ…ん!!」
口を開こうとするたびに繋がっている彼はティナの奥を激しく穿った。口からは意味のない言葉が漏れるだけ。名前を呼びたくもその急速な快楽の前では抗う術も無く流されるだけだった。嫌だと彼の瞳を見詰めると、右の瞳がそれで良いと言うように優しく彼女を見つめ返した。掠れるほど小さい声で彼の名を呼ぶとさらに優しい眼差しとなり、組み敷いていた愛しい令嬢の体を繋がった儘、抱き起した。愛欲でだらしなく開く花弁のような唇を塞いで、そうして律動を開始した。
喋らなくて良い。語らずとも、全てを知っているから。ただ。
「愛している」
その事実だけでいい。
貴女の口からもその睦言が聞きたいと囁けば、耳にかかる吐息と、熱を孕む声に少女は震えた。同じように応えたかったが、律動と押し寄せる快楽でまともに言葉を紡ぐことができない。それでも何とか伝えたく、タガが外れそうな意識を取り留めておくように、私も、と応えるように、彼の体躯に抱きついた。離れてしまわないように、銀の歪みのない髪を指に絡ませて、時折皮膚を引っ掻きながら必死に。少女の体の柔らかさ、温かさ、縋るように必死な手、引っ掻かれた皮膚の痛み、セフィロスにとってそれは全て愛しいものだった。彼女から与えられるもの全て、彼にとっては何にもかえ難い喜びであった。
何度も口づけを贈り、果てても繋がった儘、お互いに欲を貪りあう。その姿は獣のように荒々しかったが、それはずっと二人の間にあった溝をすぐさま埋めようと、欠片を掻き集めるように早急に。何度も二人は互いを確認し、互いの片目を見つめ合い、そうして傷を負った瞳を撫であった。自分が刻んだ証を。縛るための鎖となる醜い傷を。そうして尽きなく求めあった。

窓から覗く月がゆっくりと西の空へと逝く、そうして陽の光が稜線を縁取る頃、愛欲に溺れ意識を飛ばした少女が目を覚ます。一緒にあったはずのぬくもりが抜けていく気配を察し眠りの底から一瞬にして覚醒した。あの人は何処か、ぼんやりとする頭で辺りを見渡すと、寝台の淵に座り、支度をしている彼の姿を捉える。腕を伸ばしてシャツに触れると、セフィロスは振り返り、その手を握り返した。
「起こしてしまいましたか?」
執事の時の声、執事の時の言葉使い。夜の情事の時のような、幼い頃のような声や、言葉使い、視線では無いことに、ティナは寂しさを感じた。冷たい手が少女の白い頬を撫でる。その柔らかさを堪能するように、輪郭をなぞりその存在を確認するように。その時だけ彼の視線から事務的な執事のものが消えてティナはほっと息を付き安堵する。行ってしまうの?消え入りそうなほど可憐な声で問いかけると、彼は感情を殺し、ええ、と短く是の返事を返した。悲しい表情を、寂しい声を、恋しいという言葉を彼女の前で囁いてしまったらこの場から離れることが出来なくなる。
「今日はお兄様方に何を言われても貴女の傍にいますから」
そんな悲しい顔をしないでください。
それでもティナの表情は憂いを滲ませた儘、じっと彼を見つめている。そのうち、ふ、と息が漏れるかのように口元が上がる。悲しげなものを含ませながらじっと彼を見つめなおして、ゆっくりと繋いだ手を離した。








今日も窓辺から見える森は深い緑に染まっていた。陽の光に当たってそれは時折宝石のように輝いた。空も澄んだ青でポツンと白い雲がアクセントで浮かんでいた。今日も穏やかな朝だ。お腹の奥がまだ少し熱く、気だるさが残る。けれど我慢して起き上がる。今日の予定は何だったかしら?今日の衣装を選びながら、記憶を辿っても思いだすことが出来なかった。昨日の執事は彼では無い、お兄様に付いている人だったからきちんと耳に入ってこなかった。取りあえず忌々しいお見合いは無かった筈。
ふと、自然と笑みが漏れた。どうでもいいわ。彼が来てくれるのであれば。そう思考を転換させて目の前に広がるドレスをこれでも無い、これも違うと選んでいった。
赤の多い私の衣装。忌々しい色。一時に味わった恋。その色を知ってしまったら、激しい罪の色をあの人の前で纏うことが出来なくなってしまった。
赤は血の色。
赤は女の色。
赤は傲慢の色。
赤は強欲の色。
赤は色欲の色。
赤は罪の色。
赤は罰の色。
赤は贖罪の色。
それは私の色。
それは私。
私の象徴だった。私自身だった。私の罪や、罰、過ち、自我、卑しさを艶やかに醜く染め、現に映し出す汚らわしくて崇高な色だった。欲に塗れた私にはお似合いの色だと思っていた。       筈だった。
けれど私は見てしまった。あの人から流れる清血を、白い肌を染め上げたあの人の芳しい香りを放つ赤。私の為に。私の我儘で傷つけたその傷から、背筋も凍る程の美しいその顔(かんばせ)から私とは違う麗しい紅が吹き出し滴り堕ちた。結局汚らわしいのは私だけでどんなに美しい紅(いろ)を纏っても、どんなに汚らわしい赤(イロ)で隠しても私は卑しく穢れた儘。
穢れていると解っているのに、その赤は、私を美しく染め上げた赤は、私を隠してくれた赤は、私を罪深く映した赤は、今はただ、私を嘲笑うだけだった。醜い子、卑しい子、いけない子。叫ぶように私を責め立てる。赤い布の群れの中、その残り半分のスペースに納められた淡い色だけが私を慰めた。今まで赤が崇高だと、罪に染まることで救われていた私にとって、その色が優しさだと気付いた。私が無粋な理由で選んだ赤、お父様や、お兄様が勘違いして選んだ赤、婚約者達が欲を含んで選んだ赤、よりも…彼がどんな気持ちで選んだか解らない色が、今はとても愛しい。その色は胸を締め付ける。
恋の色なんて知らなければ良かった。
そうすればあんなに苦しまずに済んだ筈。
幸せを象徴するような穏やかな色なのに、中身は酷く辛辣で。

最も純潔な色を手に取った。あの日赤に染まってしまった処女雪のような白のドレス。フリルもレースもあしらわれた可憐な小花のようなドレスを身に纏った。どんなに清廉で可憐な色を纏っても、私は穢れた儘で、醜い儘で、卑しい儘だけれど、唯一彼が、良いよ、と許してくれているような気がした。こんな事を素直に貴方に告白したら貴方はどんな反応をするかしら?嘲笑う?失笑するかしら?呆れるかしら?
お願い、錯覚させて。どう思われても構わない。貴方がそう思っていようと。もう私に残された救いはそれしか無かった。
私は
知っている。
今も
昔も
立場は変わってしまったけれど。
運命を狂わせてしまったのに。
貴方は昔と変わらない優しさで
微笑んで
触れてくれる。
きっと貴方は私に優しく微笑むだけなんでしょうね?
もう赤は
この肌に付いた、あの人から贈られた刻印だけで十分。
コルセットのリボンを結いあげて、肌を白で隠した。昨夜彼が付けてくれた痕が隠れるのが少し寂しいと思えた。
同じような白い色の靴は履いた丁度その時、部屋の中にノックの音が響いた。
















白を纏った少女の姿を捉えると青年は酷く満足気に微笑んだ。彼女が赤を選ばず、自分の選んだ色のものをその身に、肌に纏っている。贈っては時間が経ち、一度も袖を通されずに捨て去られた衣装はどれだけの量だったか?着られることなど無いと解っていながら、彼がその柔らかで清廉な色の物を贈るのは、それが彼女にとって一番似合うものだと知っていた。清廉で美しい、無邪気な彼女に一番ふさわしいと。
セフィロスは彼女が赤を纏っているのも好きだった。けれどもその色を纏う幼い主人は何処か苦痛の色を滲ませていた。鮮やかで少女の証のように暴力的なほど純粋性を表すその色を纏う主人は喪に伏している時のように厳かで歳に釣り合わない、感情の無くただ冷たい美貌の仮面を付けているようだった。そんな彼女も好きだけれども。昔のような彼女の方が好きだ。自分の好みを押しつけることは嫌われる要因の一つだと知っていながらその色を贈り続けた。実る事の無い願いは果たされ、そうして計算されたかのように繋がることまでも叶った。神の大いなる福音か、それとも嵐の前の静けさか、首を借り取ろうと強かにその時期を待つ死神の罠か、様々な思考、思惑が交差する。思考する中、セフィロス、とはっきりと玲瓏に響く声を聞きとってはっとなって声の方を向いた。
甘い声で彼女は彼の名を紡いだ。一文字、一文字大切にするかのように優しく呼びかける少女に彼は笑顔だけで応える。ティナの背に流された儘の髪を手に取り、彼はどうしますか?と尋ねるとティナはじっと彼の白銀の髪を凝視し、そして細い手を伸ばした。髪かと思うと、その指は彼の髪を結っていた黒の絹の結い紐を掴み解いた。悪戯っ子のように笑って、これを使って結って、と楽しげに言いながらドレッサーの前のスツールに腰掛けた。ご機嫌な彼女の髪を取り、どうしようかと迷い、髪を高い位置に纏め縛り上げた。金の髪に映える黒に、彼が彼女に与えた金の髪飾りを結い紐の結び目の上に添えた。花と木の実が象られた髪飾りは動く度に連なる金の細工がしゃらしゃらと音を立てて煌めいた。耳元に当たる飾りを指で揺らしながら少女は無邪気に笑う。久方ぶりに見たティナの無邪気な姿にセフィロスは小さく微笑みを浮かべながら、少女の耳朶に髪飾りと同じような金の花の耳飾りを付け、首には黒のチョーカーを巻いた。鏡には御伽噺の姫君のように可憐で麗しい彼の愛しい人。堪らずに後ろから華奢な体を軽く抱きしめると彼女の頬がほんのりと赤く染まった。









嗚呼、私の可愛い人、私の愛しい人。永久なる妻となる人よ。「今はしませんよ」
言葉の意味を理解すると彼女の白い頬は益々はっきりと染まっていった。白日の下で見る彼女の柔肌は美しいけれど、ああ、今度ひっそりと仕掛けてみようか。子どもが悪戯を企む心地のようだった。(考えていることは心底邪だけれでも。)
けれど今日は…。
「お嬢様」
そう呼ぶと鏡の彼女の表情は不機嫌な色を滲ませた。瞳の奥に不安の色を隠しながらじっと鏡に映った私を見つめた。私だって彼女の愛らしい名前を囁きたい。けれど今は誰もいないとは言え、誰かが入って来るかもしれない。誰かに聞かれてしまうかもしれない。(そんなことも無いけれど念の為。)友でもある彼女の義兄達であれば何事も無いように、ただ仲直りしたと思ってくれるだけだが、もし当主の耳に入ったら、私の首を刎ねてしまうだろう。 あの男は…お嬢様の事を、ティナを心底愛しているから
そんな顔をしないでください。耳元でわざと吐息を混じらせて囁くと擽ったそうに身じろいで愛らしい声が開花したての花のような口から洩れた。
「今日のご予定を把握していらっしゃいますか?」
問えば彼女はかぶりを振る。だろうな、と予想の付く回答に小さな笑みが漏れた。彼女は私の声以外、声として認めない時がある。
「今日は急に先生の予定が悪くなった、と連絡が来て…今日は一日自由ですよ?」
それを伝えると彼女は上を見上げ、直接こちらを見つめた。何かを求めるような彼女独特の熱の籠った瞳で。
「どうなさいますか?」
そう尋ねるのは、貴女は愚問だとお笑いになるだろうか?一つの答えを隠して尋ねたその刹那彼女の表情は意地悪された幼子のように悲しそうに表情を曇らせた。
今日ずっと一緒にいますよ…ただ
何もせずに此処に居るのは何だか勿体ない。普段彼女は屋敷の外を出ない。人が多い所も嫌いで、静かに室内で過ごす事を好んだ。外に出るとしても中庭くらい。何かしたとしても大人の欲が入り混じった行為にしか発展しない。昔、まだ彼女の両目は光を捉える事が出来た頃は、良くすぐ近くの森に遊びに行ったものだ。
試しに、何処か行きたい場所は無いかと尋ねると彼女の視線が右往左往と考える時のものになった。そうして暫くして、あ、と何かを思い出したかのような声が漏れた。


















もう、其処には久しく行っていない。
貴方と一緒だと行けなくて。
けれど
今なら貴方と一緒なら行けるような気がして。
通るたびに忌まわしい過去が蘇る。通るたびに私の邪心が後悔となって押し寄せて狂ってしまう。
“ねえ連れってて”
あの日強請った願い。幼い心に潜んだ欲望。子供の願いとは思えないほど黒く無粋な魔物が隠れている事に彼は気付きもしないで、彼は私に良いよと言って微笑んだ。
母の眠る御墓に。
彼は何の疑いもせず、母の事は大好きだけれど親を想う子を演じる私の我儘を聞いて、一緒に森に入った。此の目の光を失ったのは、貴方が可愛いと褒めてくれた顔に傷を負ってしまったのはきっと天罰ね。貴方を騙した、母を利用した、その報い。
何かに気付いた彼は私の手を強く握った。見遣れば、大丈夫?と昔のように尋ねてくれた。酷く嬉しい事なのに、今は焦ってしまう。引き返しますか?という問いにすぐさまかぶりを振って拒否すると、苦みを含んだ笑みが漏れた。
大丈夫
だって自業自得だもの。
勝手に利用して、勝手に落ちて、勝手に怪我して、勝手に後悔して、そうしてまた利用して、貴方を縛って、苦しめて、そうして勝手に後悔して、勝手に嘆いて。
足は小道の通りに進む。細い一本道の脇には光の恩恵を受けて、小さいながらも咲き誇る花々が彩る。小さい頃は花を摘みながら母の眠る場所まで道を辿った。けれどもあの時の私はそれらに何の反応も示さずに一直線の道を足早に進んだ。貴方の言う事も聞かずに。最初から聞く心算も無く。
もうすぐ分かれ道。左を行けば安全な道。普段ならその道しか許されていないからそちらを選ぶけれど。その日は右の道を選んだ。足早に駆けて、彼の隙をついて、途中までは安全な道。そして早く御墓まで辿りつける事の出来る道。けれども途中で道は途切れる。分かつ道を繋ぐのは少し老朽化した橋だけ。小さな吊り橋は使い古された蜘蛛の巣のように不気味に垂れ下がり風で僅かに揺れている。
そこに私は足を踏み入れた。彼が来てしまう前に。
ただ
私は怪我をすれば良い。
橋から地上の高さはそんなに高いものでは無い。
そう怪我をしたとしても大したものでは無い。悪戯や、外で遊ぶのが大好きだった兄たちはこっそりその道を選んで良く遊んでいたけれど雨の日の翌日、足を滑らせて落ちてしまって怪我をしたと。
これで貴方が他の女の人の所に行けなくなったなんて事態にはならないのは解っている。
けれど…少しでも貴方の婚期が伸びてくれれば良い。
最後で良い。貴方に甘えてみたいだけだった。
本当は
それ以上の望みを抱いていたけれど。
最初はほんの小さな願いだったのに。

貴方の姿を捉えてそして私は、縄と縄の間からその身を…。

焦る貴方の表情。伸ばされた手に、同じように応えるように伸ばしたのは、僅かな後悔が為したものだったかもしれない。
抵抗も無く、落ちる私の体。
右目が最後に捉えた風景は貴方だったら良かったのに。
緑の葉の間から突き出た、折れた先が鋭い、棘を伴った野茨の 枝。


と呟いてしまった気がする。

ガサガサと木々の枝と葉を揺らして、重力の力を軽減してくれた。橋の始点に立っていたから崖の地肌もクッションとなってずるずると音が鳴るように私は予想してたよりもゆっくりと地上についた。
体の傷は大した事ない。けれど。ねえ…右の眼に宿った熱は何かしら?開けようにもそれは叶わず、暗い世界が広がっている。反射的に抑えた手が酷く滑って気持ち悪い。足元に咲く花は白いのに、所々赤い斑点を付けて、場所によっては真っ赤な物も混じっていた。白だった服もだんだんと赤に染まっていく。上の方はその色の元が溜まってもうくすんで黒くなっている。

嗚呼、罰だと
理解するのに時間は要らなかった。

彼はどうしているかしら?
こんな顔、彼が可愛いと言ってくれた姿はもう此処には無い。
来ないで
見ないで
不安でたまらなくて、上を見上げた。彼の姿は見えない。左の眼が熱い。涙が溢れて視界が定まらない。頬に一つ雫が落ちた。
そのすぐ後に貴方は私の元に来てくれた。その表情は今まで見た中で悲しげで、泣きそうになっている瞳が綺麗だった。小雨の粒が髪に付着して宝石のように美しかった。
私は貴方に傷を見られまいと必死で、手を抑えていた。
それだけは覚えている。でもそれ以外は、なんだか他人事のように見ていた気がする。呆然と貴方に負ぶさられて運ばれたのは覚えている。
移り変わる景色を
必死な彼を
彼の黒い服に私の血が染みついていくのを
私たちを探して迎えてくれたお義兄様達を
お義父様の歎く姿を
悲しそうな彼の顔を


ひとごとだったらよかったのに


ほんの悪戯程度のものだった。
けれど大事なものを失った。不完全な私は彼に愛される事なんて無いのに。
例えそれが御世辞であっても、恥ずかしくも喜ばしいことだった。
醜い姿の私。
卑しい私。
もうこんな姿では彼の前に立てることも出来ない。
もう右の瞳は彼を捉える事が出来ない。
醜く、壊れた私。
後悔しても遅くて、懺悔の言葉を述べたくてもそれは何処か薄っぺらい。罪を償おうとしても此の罪は此の身には重い。それに罪を抱きしめて祈るだなんて、そんなこと出来やしない。嘆く涙など私に流す資格も無くて、
嗚呼、それなのに彼は何て酷く穏やかに微笑むんだろう。
悪いのは私なのに。
貴方は何時もと変らぬ優しい声で、私の願いを尋ねたんだ。
欲望と罪悪の間で揺れた。
駄目だと律する。附け込めと命令する。
神の許しの慈悲深い聲かしら?
それとも悪魔の上辺だけの常套手段?


それとも

…純粋に貴方の想いなら。


私は






「私の…眼になって」





愚かな私は願いを口にしてしまった。
一緒に居たかった。どんな形でも良かった。
その時の私は恋の味も、色も、感触も知らなくて、玩具を強請る子供と同じ感情で口にした。
婚姻は望んでいなかった。その約束は私には早過ぎて、彼と私では差がありすぎた。
甘い関係は望んでいない。ただ彼が自分とずっと一緒に居てくれればよかった。
本心を確信したのは私と貴方の間に主従関係という溝が出来た瞬間だった。
違う、と心が嘆いた。忍びよる寂しさの冷たさがおぞましい。
利用して。
縛って
そうして手にしたものは結局空虚だった。





恋なんて
幸せなものじゃない

それなのにそれを幸せの在り処だと声を高々に騙るんだ!!

それでも気持ちは止まることを知らない。
それでも冷めることを知らない。
思い描く事を止めない。
狂った情熱。
愚行と知りながらその情熱に人は易々と取り憑かれる。

ねえ
貴方はどうしてこんな私を愛したの?

どうして
恋という
淡い色した黒い焔に気付いてしまったの?





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Elde

Author:Elde
はじめまして
Eldeと言います
DFFにはまってしまい、とうとうサイト作ってしまいました。
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